【No.33】交響曲「メキシコの祭り」

曲概要

オーウェン・H・リード氏は1910年にアメリカで生まれた主に管弦楽の作品を残している作曲家である。

 

吹奏楽では本作品以外にも「スピリチュアル」などで知られる。
リード氏は主にメキシコを始めとした民族音楽に興味を持ち、それらを題材とした作品が多くある。
本作品もそのうちの1つである。

 

この曲は教会の鐘の音で始まる、全3楽章からなる楽曲である。
演奏時間は約22分30秒。

 

タイトルにもあるように、この曲はメキシコの各地に伝承されている民族音楽を基に作曲された。
民族音楽の素材は、作曲者のリード氏がメキシコ各地を旅したときに収集したようである。

 

第1楽章「プレリュードとアズテックダンス」 アズテックダンスとはメキシコ・グアダラハラ地方に伝わる民謡のことである。
教会の鐘が鳴ると、それに呼応するかのようにホルンによるファンファーレが鳴り響く。
そのファンファーレにおびき寄せられたかのように、各パートが集い始める。花火の爆音(バスドラ)なども加わり、徐々に盛り上がりを見せる。
闘牛場の「エル・トロ」と呼ばれる音楽(トランペット、オフステージで演奏)をきっかけとして、人々はアズテックダンスを踊り、祭りは盛り上がっていく。

 

第2楽章「ミサ」 教会の鐘がミサの始まりを告げ、祭りは祈りの場面へと変わる。
メキシコ・チャパラ地方の教会でよく歌われるグレゴリオ聖歌「リベル・ウサリス”アレルヤ、ヴィディムス。ステッラム”」が基になっている。
トロンボーンによって3つの音の提示が提示され、厳かな雰囲気で祈りが始まる。
徐々にその祈りに人々が重なり、やがてtuttiとなって全員で祈りを捧げる。その後、徐々に静まりながら祈りは終わる。

 

第3楽章「カーニヴァル」 祈りを終え、祭りはいよいよ最終局面へと再び大きな盛り上がりを見せる。
ハリスコ州のマリアッチ(バイオリン、トランペット、ギターなどを使用する演奏形態のこと。メキシコでは祭り、宴会、記念日、卒業記念などの時に頻繁に演奏され、その音楽は広く親しまれている)が良く演奏する民謡「エル・ソン・デ・ネグラ」が基になっている。
この民謡を聞いた人々は次第に興奮し、祭りはひたすらに盛り上がっていく。
さらには1楽章・2楽章で演奏された音楽も再び姿を見せ、酒の影響もあって人々のテンションは最高潮に達して祭りは終わりとなる。

 

この曲の推しポイント!

「メキシコの祭り」の様子が見事に再現されており、当楽団「Fiesta」に適した作品と言えるかもしれない。

 

筆者はこの作品を非常に好んでおり、頻繁に演奏(大阪市音楽団・2013年6月第106回定期演奏会のライブ録音)を聴く。

 

この作品を聞いていると、知らず知らずのうちに体が踊り出しているときがありびっくりする。

 

それくらい、ノリの良い楽しい作品であるという事である。 第1楽章や第3楽章のような祭りが盛り上がっている様子をイメージするのはもちろん楽しいのであるが、本作品はなんと言っても第2楽章「ミサ」の厳かな雰囲気がイチオシと言えよう。

第2楽章はラルゴ、ゆったりとしたテンポの楽章であり、記譜された一つ一つの音を大切に味わう場面である。奏者としては非常に気を遣う難しい場面であると想像しているが、聴衆としてはその美しい和音の響きや各楽器の音色をこれでもかと存分に味わうことができるだろう。

第2楽章中盤でtuttiとなり、ffでの演奏となるが、いわゆる「爆音」ではない美しく、かつ力強さがあり、だけども厳かな、そんな音色で奏でたい。

曲情報

曲名:交響曲「メキシコの祭り」(La Fiesta Mexicana)
作曲者:H・オーエン・リード

出版年:1954年

この曲を一言で言うと:吹奏楽×メキシコ=神曲
演奏歴:早(第42回定期演奏会など)

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Euph. K