【No.72】ドールズ・コレクション I 〜おもちゃの兵隊と

曲概要

「ドールズ・コレクション I 〜おもちゃの兵隊と」は井澗昌樹の作曲した吹奏楽曲です。

フォスターミュージックの出している「コンクール自由曲ベストアルバム4歌劇『カルメン』」に収録されています。

吹奏楽コンクールでは出雲吹奏楽団が2011年に演奏していますね。

 

この曲の推しポイント!

様々な種類のある人形たちの中でも、「おもちゃの兵隊」にフォーカスし、イメージを膨らませた曲です。

 

スコアには場面ごとにその名前が記載されています。

序奏を挟んだ後、最初は「王女の庭」

グロッケンとピアノによって奏でられた主題が木管楽器へと展開されていくワルツです。

どこか不安定で、「ラ・ヴァルス」などを思い起こさせます。

 

続く「ファンファーレ」は「王女の庭」の主題を受け継ぎつつ、Hr.を中心とした金管楽器群が旋律に加わります。

Fl.によるソロが次の主題を示唆しながら、この場面は終わります。

 

「レジスタンス」の場面はOb.の二重奏による主題から始まります。

そして徐々に高まっていったボルテージはTp.による強奏へと行き着きます。

 

場面は変わって「恋に落ちて」では、Sax.によるアンサンブル。

S.SaxとA.Sax二本のアンサンブルは贅沢ですね。

ちな後半のホルンがイチオシです。

 

そして「おもちゃの兵隊」の場面では冒頭が再現されます。

「王女の庭」の場面になりそうになるのですが、それを木管楽器による甘いアンサンブルが何度も踏みとどまらせます。

 

最後の「もう戻れない」は積み上げてきた物を壊すような、破壊的なPrestoの音楽です。

主題が顔を覗かせながら、狂ったようにラストへと突っ込みます。

 

一応、名前と共に場面を紹介してみましたが、作曲者は

スコアの所々に記された「王女の庭」「おもちゃの兵隊」などの語句は、私の個人的な記憶。解釈の端緒になるならとの思いから、そのまま表記しているが、特にストーリーがある訳ではない。思い出はいつも断片的で、脈略など無いのだから。

と語っています。

各々の解釈の上で演奏するのが良いのでしょう。面白い反面、とても難しい曲ですね。

 

井澗昌樹先生と言えば解説の独特さですが、この曲も違わずです。

女の子にとって、飯事(ままごと)は慈愛に満ちたものだったはず。男の子にとって、戦隊ごっこは真に勇気と誇りを懸けるものだったはず。私たちが抱いていたぬいぐるみは生きていたはず。そこには、温度を持った感情があったはず。

大人になったから虚構だと気付いたのではなく、それらを虚構だと切り捨てたから、私たちは大人になった。一種のノスタルジアだろうか。然し乍ら、人はどうして、その豊かな想像力を失うのだろうと寂しく思う。

こういうの書ける人間になりたいです。

 

また、タイトルにドールズ・コレクションⅠとありますが、Ⅱの主題は既に完成しているとのこと。

なんなら一度生み出されているらしいのですが、納得いかず破棄なさったそうです。

(二本のSax.とピアノの室内楽だったらしい)(要出典)

 

同じく長らく謎に包まれていた「詞曲」シリーズはこの間続編とⅠが出版されましたし、こちらも是非出して欲しい……。

 

大好きな曲ですが、あまり演奏機会に恵まれていない印象なので悲しいです。

うちでやりたいですね。

 

 

 

 

 

曲情報

曲名:ドールズ・コレクション I 〜おもちゃの兵隊と
作曲者:井澗昌樹

作曲年:2011年

この曲を一言で言うと:Ⅱを待ち続けて早何年
演奏歴:なし

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Tuba. T