【No.96】パガニーニ・ロスト イン ウインド

曲概要

「パガニーニ・ロスト イン ウインド」は長生淳の吹奏楽曲です。

元は室内楽ですが、東京佼成ウインドオーケストラの委嘱で2011年に編曲されました。

 

この曲の推しポイント!

ニコロ・パガニーニの24の奇想曲(カプリス)

その中の終曲(24番)の主題が用いられた曲になります。

 

非常に有名な主題で、テレビドラマなどでも聴くような気がしますね。

 

パガニーニといえば、この曲というイメージが強いですが、他の曲はあまり楽譜が残されていないようです。

自分で楽譜を管理していて、外に公開しなかった上に死の直前に焼いたとか。

天才エピソードかっこいいですね。

 

元々は2本のアルト・サクソフォンとピアノのための曲で、そちらを各パート一本ずつで吹けるように自身で編曲したものです。

一人で吹ける感じは全然しませんが。

 

ここに長生氏の解説を引用します。

 

この曲は、もともとは須川展也氏の委嘱により2008年に書いた、2本のアルト・サクソフォンとピアノのための曲です。その際、氏から「パガニーニの(24のカプリスの終曲の)主題を使って」との希望があったのですが、その主題は、一般的な変奏曲とは異なり、見つけにくい形で象徴的に用いられています。それは狙いというよりは結果で、ではなぜそうなったかという理由のひとつは、書いているときに念頭にあった、須川氏の音楽における求道的な姿勢、つまり氏が追い求める「なにか」のように主題を扱ったということです。言い換えるなら、今の世の中にあってしばしば見失われがちな、本当に大切な「なにか」のように。
しかし改めて振り返るともうひとつ思いあたることがあって、それは“Lost Paganini”ではなく“Paganini Lost”とした理由でもあるのですが、頭のどこかに“Paradise Lost”という言葉がひっかかっていたせい。そして私にとって身近なのはミルトンの叙事詩ではなく菱山修三の詩、その一節を引いてみます。

『虚空のなかへ、僕は身ぐるみ堕ちる、ああ、なんといふ Paradise Lost(!)
僕は、いつまで堕ちつづけるのだらう、見知らぬ世界を、翼を折られた小鳥のやうに?』

この喪失感と、それゆえの追い求める気持ちが重なって綴られたのがこの曲、ということになりそうです。

 

解説に出てくる菱山修三氏は20世紀の日本の詩人です。

「虚空の中へ〜」は彼の「夢の女」という詩集に収録されている「Paradise Lost」という詩のことですね。

 

ミルトンとはもちろん「ジョン・ミルトン」

叙事詩「失楽園」の著者です。

失楽園といえばアダムとイブがりんご食べちゃうやつです。(専門家に怒られそうな表現ですが)

 

曲自体は確かにパガニーニの主題が散りばめられているのですが、意識して聞かないとわからないです。

例えば冒頭のSax.とか。印象的なA.Saxのソロとか。

ずっとその主題のモチーフが用いられています。

 

やはり、原曲もあってSax.がだいぶ難しく、かっこいい曲です。

もし当日不調だったら目も当てられませんね。

 

長生氏本人がこの編曲に非常に満足しており、「もう室内楽版は演奏できないねぇ」と言っていたとかいう逸話も残っています。

 

名曲です。

 

曲情報

曲名:パガニーニ・ロスト イン ウインド
作曲者:長生淳
編曲年:2011年

この曲を一言で言うと:パガニーニの主題を確認してから聴こうね
演奏歴:なし

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Tuba.T