NewYearConcert

フィエスタ・ウィンドシンフォニー New Year Concertにご来場いただき、誠にありがとうございます。

短い時間ですが、心を込めて演奏させて頂きます。

以下、本日演奏する4曲を曲順で紹介します。

曲紹介は、毎度詳細すぎる解説でお馴染みの早稲田吹奏楽団36期 横山裕也さんに書いて頂きました。

ページ最下部には、アンケートフォームもございますので、

演奏会終了後にご記入くださいますようお願い申し上げます。

1.季のまど

 長生淳(1964-)は、茨城県出身の作曲家。管弦楽や合唱など様々な分野で活躍しているが、特に近年は吹奏楽の分野で人気を集めている作曲家の一人で、複数のパートで一つの旋律を紡いだり、異なる声部が複雑に関わりながら曲が進んでいったりと他の吹奏楽作品にはない特徴的な響きの作品が人気を集めている。吹奏楽コンクールの自由曲として毎年多くの団体が長生作品を取り上げている。

 この曲は、「21世紀の吹奏楽実行委員会」が、日本人作曲家による新しい吹奏楽のレパートリーを創出する目的で1998年から年に一度主催している演奏会、「響宴」のスクールバンドプロジェクトとして委嘱され、20153月に行われた第18回「響宴」で初演された。スクールバンドプロジェクトとは、教育的な内容の吹奏楽作品の開発・発信を目的とした委嘱プロジェクトで、昨今の学校現場における吹奏楽の現状を踏まえ、「少人数で演奏可能で難易度も比較的高くない、しかし音楽的には内容の高い作品を」という基本コンセプトの下、作曲家に委嘱が行われている。

 この曲について作曲者は次のように述べている。

《季のまど》は「ときのまど」と読みます。たとえば、中学生が吹奏楽を演奏する姿を見て、あるいは音大で学んでいる学生達を見て、当時の自分を思い出してみたり、それぞれの来し方行く末に思いを巡らせてみたり、ということがあったりします。不出来な愚息らであっても、親とすればいとしく見つめたくなる時はままあり、その時、ふと自分は親からどのように見られていたのだろうと考えるなんてこともあります。そういった具合に、人生の中でのいろいろな時期を眺める窓、というほどの意味です。今中学生であるみなさんへ、ではなく、かつての自分へのメッセージということになりましょうか。こんな心境で書き出したもので、曲の根底にはどこかそういったところがあるようには思いますけれど、そして第1主題はそんな思いを言葉にしたものから着想したところはありますものの、物語に沿って話が進むということではなく、形式的にはソナタで構成しています。

ソナタとは音楽の形式の一つで、序奏(曲の始まり)、提示部(曲の主題の提示)、展開部(主題を様々な形に展開)、再現部(提示部の再現)、コーダ(曲の終結部)で構成される。


 曲はごく短い序奏で幕を開け、木管楽器により第1主題が提示される。流れるような主題は徐々に高揚し、その頂点で、低音の8分音符の動きに支えられて、トランペットとトロンボーンが勇ましい副主題(補助的な主題)を吹き鳴らす。続いて第1主題が短調で現れた後、テナーサックスとホルンにより憂いを帯びた第2主題が提示される。第1主題のリズムが力強く繰り返されると展開部へ。第1主題と第2主題が変奏的に登場し、緊張感を持ちながら進んでいく。断片的な旋律の掛け合いが積み重なっていくと、全員の強奏で第1主題が現れ再現部に入る。第1主題が高らかに歌われた後、曲は徐々に静かになり、第2主題がアルトサックスにより歌われる。曲の前半とは少し表情を変え、2つの主題が再現された後、トランペットとトロンボーンによる副主題が再び登場し、曲は終結部へ。第2主題が高らかに響き、輝かしい和音で曲は幕を閉じる。

前述のように中高生の吹奏楽レパートリーを意識して書かれた作品ではあるが、決して易しい曲ではなく、様々な仕掛けが施されていて、他の長生作品より音数は少ないものの、やりがいのある作品となっている。

 

2.With Heart and Voice

デイヴィッド・ギリングハム(1947-)はアメリカ出身の作曲家。吹奏楽の分野で多くの作品を書いていて、楽曲は社会的な事件や問題を題材にして作られたものが多く、ギリングハムが軍楽隊の一員としてベトナム戦争に従軍した経験に着想を得た「ベトナムの回顧」、1999年にアメリカで起きたコロンバイン高校銃乱射事件をきっかけに書かれた「And Can It Be」などが知られている。
この曲は、米国ミネソタ州のアップル・ヴァレイ高校の創立25周年を記念して委嘱され、2001年に初演された。作曲者のギリングハムはこの委嘱を受けるにあたって、同校が芸術教育に大変力を入れていることに惹かれるとともに(アメリカでは州によって中学・高校で芸術科目がカリキュラムに含まれていないところもある)、同校の校歌が「Come, Christians, Join to Sing(来たりて歌え)」というギリングハムが特に好んだスペインの古い賛美歌であったことに運命的なものを感じた、と述べている。曲のタイトル「With Heart and Voice」も、この賛美歌の歌詞の一節「Let all, with heart and voice~」から名づけられ、同校の創立25周年を「心と声(=心は祝賀を表現した音楽の感情、歌は音楽)で祝う」という意味が込められている。曲はその賛美歌による「校歌の旋律」と、同校の芸術への傾倒を表すギリングハムオリジナルの「使命の旋律」の2つの主題によって展開されている。
曲はギリングハム特有の神秘的で不安感を煽るような雰囲気で開始される。校歌でもある「来たりて歌え」(第1主題)の最初の4音が、断片として低音楽器、ホルン、アルトサックス、トロンボーンなどで次々に演奏され、徐々に勢いと推進力を増して、金管楽器によるクライマックスを築く(ここでは、まだ第1主題の全貌は現れない)。その後、ピアノと鍵盤打楽器による静かなパッセージで平和に満ちた静けさへと導かれ、フルートとユーフォニアムが新しい詩的な旋律(第2主題)を、サックス・カルテットの伴奏で朗々と奏でる。この新たな旋律は、このアップル・ヴァレイ高校の‘芸術教育に重点をおく’という類い希なる教育方針を象徴しているものだと作曲者は述べている。この穏やかな部分は楽器の数を増やしながら盛り上がり、短いブリッジを経て、中音楽器やチャイムが主題である「来たりて歌え」の全貌を演奏する。曲はさらに速度を増し、ハイハット、ブレーキドラム、ウッドブロックなどの打楽器を伴い、クラリネットとユーフォニアムによって第2主題が短調で演奏される。これが他の楽器に緊張感を持ちながら受け継がれて進行していき、第1主題をリズミカルにしたパッセージ(木管楽器と木琴)と、ゆったりとした第2主題(金管楽器による)がコントラストをなし、頂点を迎える。続いて‘敬意を持って’と書かれた、ゆったりとした場面に変わり、フルートによる第2主題が前半同様に朗々と演奏される中、第1主題がホルンで対旋律のように演奏される。作曲者はこの部分を第1主題と第2主題の‘結婚’と表現しており、「この高校の繁栄を継続させるには、第2主題の象徴である使命‘芸術教育に重点をおく’を忘れてはならない」と述べている。その後、他の楽器も加わり、木管楽器のリズミカルな音符を背景に、金管楽器とサックスが第1主題と第2主題を対旋律的に高らかに奏でる。そして、打楽器をフィーチャーした変拍子の場面を経て、フィナーレに向かって、第1主題と第2主題が華やかに歓びに満ち溢れたドラマチックな演奏を繰り広げ、曲は速度を上げたまま一気呵成に幕を閉じる。
ギリングハムは、現代曲やシリアスな曲を作風としている作曲家というイメージが強く、日本での知名度はあまり高くなかったが、この曲の発表で一気に印象が変わり、日本でもよく知られる作曲家となった。作曲から20年以上が経っているが、未だに日本でのこの曲の人気は根強く、コンサートやコンクールの定番レパートリーの一つになっている。
(参考:曲のもとになった讃美歌「来たりて、歌え」https://www.youtube.com/watch?v=rv0XaoRQwpc )

 

3.美女と野獣

 フランスの民話を元に、1991年に製作されたディズニーのアニメ映画「美女と野獣」。ディズニー・ルネサンスと呼ばれる、ディズニーによって制作・公開されたアニメーション映画が相次いで商業的成功を収めた時期に作られた作品のひとつで、アニメ映画としては史上初めて、第64回アカデミー賞の作品賞にノミネートされた。アニメ作品だけではなく、アニメ作品を基にしたミュージカル作品も人気を博していたが、2017年には映画「ハリー・ポッター」シリーズで知られる女優、エマ・ワトソン主演の実写映画が公開され、話題を呼んだ。

日本では、1992年9月の映画公開から今年で30周年を迎えるが、2020年には東京ディズニーランドに「美女と野獣」をテーマにした新エリアがオープンするなど、その人気は衰えることがない。

その人気を支える数々の劇中歌は、1989年公開の「リトル・マーメイド」でアカデミー賞歌曲賞を受賞した、ハワード・アシュマン(作詞)とアラン・メンケン(作曲)によるもの。このコンビによる劇中歌「美女と野獣」は第64回アカデミー賞の歌曲賞を受賞、また、アラン・メンケンは作曲賞を受賞している。

今回はそんな劇中歌より、以下の4曲をメドレーでお送りする。

・「プロローグ」

作品の冒頭、プロローグのシーンでナレーションにより「昔々……」と物語のあらすじが語られる。

・「朝の風景」

「プロローグ」から途切れずに始まるこの曲は、主人公ベルの暮らす小さな村を舞台に、彼女の人となりを明るく、かつ鮮やかに描いている。村一番の美貌を持つが本の虫でもあるベルは、小さな世界から飛び出したいと夢見ていた。そんな彼女を変わり者だと言う村人たち、そして自分の妻にしようと目論む悪役ガストン。軽快なメロディーに乗せて歌い手が次々に移り変わっていく。

・「愛の芽生え」

お城に捕らえられたベルと野獣が心を通わせ始めるシーンの曲。ベルは野獣のことを「優しく親切、見かけは意地悪、でも不思議、なぜか憎めない気がする。」と歌い、野獣はベルのことを「彼女が僕を見てそっと触れてくれた、怯えても震えてもいない優しい眼差しで。」と歌う。野獣とともに姿を変えられ食器や家具となってしまった召使い達が、驚きつつも「2人の間に何かが芽生えている。」と温かく見守る。

・「美女と野獣」

バラードの傑作ともいえる、この作品の主題歌。劇中では、ベルと野獣がお城のボール・ルーム(舞踏室)でダンスをする場面でポット夫人によって歌われる。この場面は、ディズニーアニメ映画として初めて本格的にCGが導入され、ボール・ルームや黄金に輝くシャンデリアなどがCGで作られ、その背景を手描きアニメーションのベルと野獣がダンスを繰り広げる、映画を代表する場面の一つ。映画終了後のエンド・クレジットでは、カナダ人歌手セリーヌ・ディオンとアメリカ人歌手ピーボ・ブライソンのデュエットにより歌われ、こちらの方がより親しまれているかもしれない。

 

 

4.アフリカの儀式と歌、宗教的典礼

ロバート・W・スミス(1958-)はアメリカ出身の作曲家。吹奏楽を中心に活躍していて、日本では「海の男たちの歌」や交響曲第1番「神曲」などの作品で知られ、プロ・アマチュア問わず、様々な演奏会で彼の作品が演奏されている。

この曲は米国イリノイ州ウィネトカのニュー・トライアー高校バンドの委嘱により1994年に作曲された。西アフリカの伝統的な民族音楽に影響を受けていて、OYAPrimitive Fire」、「Ancient Folk Song」、「Shango」の3つの部分で構成されている。曲の内容について作曲者がスコア序文に解説を掲載しているので、引用する。

「アフリカの儀式と歌、宗教的典礼」は西アフリカの原始的な音楽を基にしている。スティーヴン・ジェイ氏の研究・録音に影響を受け、本作品は、打楽器を多用したダイナミックな祈りと歴史的な歌だけではなく、踊りと娯楽のための伝統的な典礼音楽を取り上げている。

 アフリカのミュージシャンたちは、神が人間に命を与えたのと同様に、自分たちが演奏する楽器に命を吹き込むという感覚を持っている。よって、それぞれの楽器は意識を持つものと信じられ、生きている人間と同じように敬意を払われる。この作品で活躍する太鼓は楽器であると同時に神聖な物とも捉えられている。太鼓は不思議な力を持つとされ、その力はアフリカ大陸へやってきた多くの聖職者や旅人たちには理解できないものであった。本作品に耳を傾けるうちに、喜び、恐れ、希望、悲しみなど様々な感情が呼び起こされるだろう。

OYAPrimitive Fire(原始の炎)

人類が火を獲得した様子を描いている(OYAは西アフリカ、ヨルバ族の嵐と稲妻の女神)。かつて、人類は二つの火打石を打ち付けることで幻のような力を起こすことができると発見した。人類は枝や枯葉を集め、それを燃やした。その炎はとてもゆっくりと、しかし段々と高くなっていき、やがては地平線まで広がる大きなエネルギーとなった。しかし、突然炎は弱まり、ゆっくりと命を失っていき、その最後の瞬きは天へと登り、地球は闇に取り残された。

・「Ancient Folk Song(古代の民謡)(ガーナ)曲名不詳

西アフリカの熱帯に位置するガーナを起源としている。ガーナは青々とした熱帯の海岸と荒いラグーンを持つ地である。この美しい国の平穏は、1500年代にヨーロッパからやってきた人々によって破壊され、ガーナは奴隷と金輸出の中心地になった。その結果、この地域は「黄金海岸」として知られるようになる。主題が最後に提示される際、民謡「マリリ」を基にした旋律が織り込まれている(ホルンとユーフォニアムによって奏される)

(参考:ガーナの民謡「マリリ」https://www.youtube.com/watch?v=ZfhHEHJW7zY&list=LL&index=3 )

・「Shango(シャンゴ)(雷の神へ捧げる賛歌)

雷鳴と稲妻を武器として携え、雷神Shangoが再び地球にやってくる(ちなみにShangoは前述のOYAの夫)Shangoの再来を告げようと、信者達は神の召喚を讃え、詠唱する。木と羊の皮で作られた大小の太鼓が夜通し鳴り響き、信者達は熱狂するまで踊り続けた。打楽器群の中から、冒頭の喜びに満ちた主題が再び提示され、曲は終結を迎える。

 曲は重厚な管楽器と強烈な打楽器で幕を開ける(楽譜には‘powerful’という指示が書かれている)。短い打楽器アンサンブルを挟んで踊りのような音楽が始まる(OYAPrimitive Fire)。踊りが盛り上がりを迎えたのち、打楽器アンサンブルや木管楽器のソロを経て、神秘的な雰囲気の場面へ (Ancient Folk Song)。初めはオーボエソロによって奏された歌が、打楽器のリズムに乗って、全ての楽器に広がり、民謡「マリリ」の旋律が聞こえてくると場面は一転(Shango)。猛々しいホルンの咆哮に低音楽器が呼応し、人々の雄叫びが聞こえ、時間が経つにつれて熱狂していく。盛り上がりが最高潮に達した後、冒頭の重厚なテーマが再現され、荘厳な最後を迎える。

 作曲者の解説にもある通り、全編を通して打楽器が活躍するほか、管楽器の楽譜にも歌を歌うように書かれていたり、「原始的な声、雄叫びをあげる」という指示があったり、と一風変わった面白い作品に仕上がっている。

プログラム詳細解説 文責:横山裕也

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