【No.44】我らに今日の糧を与えたまえ〜吹奏楽のための小交響曲

曲概要

アメリカの作曲家 D・マスランカ(1943 - 2017) により、2006年に作曲されました。

 

ベトナム出身の僧侶 ティク・ナット・ハン の著書 "For a Future to be Possible" を読み影響を受けたことがきっかけとのことです。

全体にテンポの遅い第1楽章 "Moderately slow" と、速い部分が多い第2楽章 "Very fast" の2つの楽章からなり、全体で15分程度です。 曲のタイトルはキリスト教の祈祷文から引用したほか、曲の最後には J.S.バッハ のコラールが利用されています。

この曲の推しポイント!

曲全体を通して常に感じられる、宗教音楽的な重さと力強さが魅力です。

 

第1楽章のテンポは遅めですが、緊張感が漂います。

最初はクラリネットの神秘的なソロから始まり、その後は金管楽器を中心に重く大きなうねりが作られていきます。

そして一旦落ち着いた後は、より厳かな曲調となって大きな山がやってきてはまた最初に近い雰囲気に戻ります。

この全体の変化の中で、緊張感が途切れることはなく、そして力強い意志を感じます。

 

そして、溜めていた力を開放するように第2楽章は始まります。

楽章タイトルの通りで速いテンポですが、疾走感と表現するには重みがあり、誰か、あるいは何かと戦うかのような曲調です。

途中に祈りを捧げるようなフレーズを挟んで、最後にバッハのコラールのフレーズで締め括られます。

この最後が、これでもかという程に重厚で、この曲全体の性質をよく表していると思います。

 

仏教の教えを知って作曲されたとはいうものの、キリスト教音楽感の非常に強い作品です。

自分の内面を見つめるという教えを受けて、D・マスランカが自身の音楽表現を見つめ直したという事のようです。

同作曲家の他の曲も、似たように宗教性を持っていますが、その中でもこの「我らに今日の糧を与えたまえ」には強く現れているのではないかと感じます。

D・マスランカの曲は日本では演奏機会があまり多くない印象ですが、アメリカではよく演奏されるようで、この曲の音源も多数あります。 この曲は演奏団体ごとの個性が比較的出やすい部類かと思うので、聴き比べるのも面白いです。

原題は "Give Us This Day - Short Symphony for Wind Ensemble" です。

 

 

曲情報

曲名:我らに今日の糧を与えたまえ〜吹奏楽のための小交響曲
作曲者:D.マスランカ

作曲年:2006年

この曲を一言で言うと:大きな力
演奏歴:無し

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Ob. K