曲概要
トランペットのファンファーレから始まる演奏時間は約10分の曲である。
冒頭で演奏されるトランペットのリズムが曲全体の動機となっており、このリズムが終始曲を支配する。
急・緩・急の3つのパートからなる。 急の部分では金管楽器の華やかな旋律と木管楽器の細かな音の羅列によって豪華な雰囲気を帯びている。
ヴァンデルロースト氏のそれまでの作風よりかは、最近の作風に近いと言えるかもしれない。
バスーンとバスクラリネットの旋律から始まる緩の部分では、ヴァンデルロースト氏らしい美しい旋律が奏でられる。
他のヴァンデルロースト氏の作品に比べると、日本のアマチュア吹奏楽団体ではあまり演奏される機会に恵まれていない。もう少し演奏機会に恵まれて欲しい作品の1つである。
この曲の推しポイント!
この曲のコンセプトは「ミニマル・ミュージック」にある。
ミニマルミュージックとは「音の動きを最小限に抑え、パターン化された音形を反復させる音楽」を言う。
冒頭3小節間で奏でられるトランペットのファンファーレが、その後全く同じリズムで何度も何度も曲中に表れる。
後半の「急」の冒頭もスネアドラムによってこの旋律が奏でられている。
冒頭のファンファーレはトランペットの2ndから始まり、次いで3rd、トロンボーン1st、ペット1st、…が入ってくる。
これら後発組は、それまでに奏でられている旋律とは微妙にズレて入ってくる。いわば「ヘテロフォニー」である。
筆者はこの作品を初めて聞いたとき、ここで心をグッと掴まれたのを覚えている。
その後木管楽器の細かな音階によっていよいよこの曲が幕を開ける。
このときの低音群の「16分音符4つ+4分音符」の動きが、たった2拍であるが、とても良い。
中間部にあたる「緩」の部分では本当に美しい旋律が奏でられる。
前半後半の各「急」の部分が比較的忙しい楽譜であるのに対して、「緩」はテンポ設定的にも楽譜的にもかなり落ち着いたゆったりとした雰囲気である。
この対比が良い。 「緩」の部分もやはり冒頭バスーンとバスクラリネットによって奏でられる旋律を繰り返し奏でることになる。
どの楽器が演奏するか、どの音で演奏するか、によって当然印象は変わるわけだが、ヴァンデルロースト氏はその変化を見事に捉えており、終始こちらを曲の中に引き込み続ける。
私はこの作品をシエナ・ウィンドオーケストラの2017年2月11日の演奏会でようやくホールで聴くことができた。
ホールで聴くと、よりこの作品の魅力が伝わるような気がする。もっとこの作品がホールで演奏されることを期待する。当楽団でもっぜひ演奏したいものである。
曲情報
曲名:ナマセ・ラプソディ
作曲者:ヤン・ヴァンデンルロースト
作曲年:2012年
この曲を一言で言うと:ヴァンデルロースト氏、だぁいすき!
演奏歴:無し
(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)
Euph. K