【No.37】サウンド・オブ・ミュージック

曲概要

「サウンド・オブ・ミュージック」といえば同名のミュージカルや映画の作品が有名ですね。

 

New Sounds in Brassからも岩井直溥編曲「サウンド・オブ・ミュージック・メドレー」の楽譜が出版されていますが、今回紹介するのはヤマハ吹奏楽団の委嘱により長生淳が編曲した吹奏楽版の「サウンド・オブ・ミュージック」です。

 

編曲者は、この曲を「私のお気に入り」や「ドレミの歌」など、単に作中の曲だけを用いてメドレーを吹奏楽編曲するのではなく、マーラーの「交響曲第1番」やリヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」等、サウンド・オブ・ミュージックには出てこないクラシック曲を盛り込み編曲することで物語の情景を新たに描き出しています。

 

長生版サウンド・オブ・ミュージックでは、映画版のために作曲された「何かいいこと」のテーマが使用されているため、映画版がベースとなっていると考えられます。私が気づいていないだけで、ミュージカル版と映画版、両方から編曲しているのかもしれませんが、、、

 

映画作品についてはこちらをご参照ください。

この曲の推しポイント!

この吹奏楽曲は3つの楽章から構成されています。曲中ではサウンド・オブ・ミュージックの様々な楽曲が繰り返し用いられますが、それぞれの楽章において主に用いられている楽曲は以下の通りです。

 

第1楽章「サウンド・オブ・ミュージック」「私のお気に入り」「何かいいこと」

第2楽章「ひとりぼっちの羊飼い」「ドレミの歌」「行列聖歌とマリア(Wedding Processional)」「マリア」

第3楽章「エーデルワイス」「全ての山に登れ」

 

また、以上の曲に加え、第1楽章では「サウンド・オブ・ミュージック」と「私のお気に入り」の間でアルプス交響曲より「森への立ち入り(Eintritt in den Wald)」と「霧が立ちのぼる(Nebel steigen auf)」のモチーフ、第2楽章では冒頭にマーラー「交響曲第1番第2楽章」のモチーフ、第3楽章では「全ての山に登れ」の後にアルプス交響曲より「日の出(Sonnenaufgang)」や「頂上にて(Auf dem Gipfel )」(調は「頂上にて」と同じ)などで繰り返し現れるモチーフが用いられます。

 

蛇足ですが、「日の出」「頂上にて」に現れるモチーフはwikipediaによると「太陽の動機」と言うようです。

時間はかかりますが原曲との聞き比べも面白いですよ。

 

他にも参考となった曲や部分があるのかもしれませんが、私の少ない知識と原曲を聞き続ける集中力ではこれが限界でした、、、

 

さて、細かな説明が多くなってしまいましたが、この曲の推しポイントはなんと言っても冒頭の2本のホルンによるソリ!

 

このソリは1本がオンステージで演奏した後、遅れてもう1本がオフステージから演奏することでアルプスの山々にこだまするアルペンホルンの音色を表現しています。

実際にホールで聞くと、反響板の裏から聞こえてくるホルンの音色が本当に山に当たって跳ね返って来たこだまのように立体感を持って聞こえます。機会があればぜひ生で聞いていただきたいです。

 

個人的な話ですが、夏山リフトで山々を眺めながらこの部分を聴いたら非常に雰囲気が出てよかったです。機会があればお試しください。 他にも沢山推しポイントがあるのですが、もう1点だけあげるとすれば、第3楽章の「アルプス交響曲」のモチーフが現れる部分です。

ここは単純に私が好きな部分なのですが、この曲が単なるメドレーではないという編曲者の独創性が特に伝わってくる部分でもあります。 言うまでもなく、本来、サウンド・オブ・ミュージックにアルプス交響曲のモチーフは登場しません。しかし、「全ての山に登ろう」の後にこのモチーフが挿入されたことで、アルプスの雄大な山々の情景がありありと描き出されています。

 

また、私の想像に過ぎないのですが、編曲者は同時に映画では描かれなかったトラップ一家がアルプスを越え、スイスに到達したという情景を描こうとしたのではないでしょうか。何にせよ、この編曲は「さすが」という他ありません。

聞き慣れていない人には難解な曲の多い長生作品ですが、この曲は有名なメロディーが多く、特殊な配置でのホルンのソリがあるなど、吹奏楽に関心の薄い人にも親しみやすく、多くの人が聞いていて楽しめるのではないでしょうか。

 

 

曲情報

曲名:サウンド・オブ・ミュージック
作曲者:Richard Rodgers
編曲者:長生淳

作曲年:2006年

この曲を一言で言うと:大人から子どもまで楽しめる長生淳作品
演奏歴:無し

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Fl. K