【No.76】シュレーディンガーの猫

曲概要

「シュレーディンガーの猫」は西村友の作曲した吹奏楽曲です。

西村友と言えば2016年の課題曲である「ある英雄の記憶~「虹の国と氷の国」より」の作曲者であり、Osaka Shion Wind Orchestraの元正指揮者でもありますね。

 

 

 

 

この曲の推しポイント!

「シュレーディンガーの猫」はシュレディンガーによって考案された、猫を用いた思考実験のことですね。

 

ふたをした箱の中に猫が1匹いる。箱の中には放射性原子が一つだけありその原子は50 %の確率で崩壊する。崩壊すると、それに反応して毒ガスを出す装置も置いてある。

量子力学においては粒子が様々な状態が「重なりあった状態」で存在しうる。(様々な状態が同時に存在している)

そしてこの「重なりあった状態」は観測機器によって粒子を観測することで、いずれかの状態に収束する。

 

このことから上記の実験を行なった場合、量子力学上は1時間後の猫は死んでいる状態と生きている状態が重なり合っているということになってしまうんだが……

というような、量子力学に対する皮肉を込めた実験です。

 

この曲はその実験に影響を受けており、二つの相反している要素が重なり合いながら進んでいきます。

A.Saxのソロによって主題が奏でられるところから曲は始まります。

追いかけるように現れる木管低音群のメロディは鏡に映ったような形をしています。

 

その後も現れる対旋律が常に旋律と相反するような響きをさせながら進んでいきます。

 

速度を上げた後は、きらびやかな連符が何度も現れては消えていきます。

これもまた、様々な要素が瞬間的に重なり合っていくということなのでしょう。

 

また、全体的にメロディ楽器(Tp.など)に呼応するようにチューバを始めとする低音楽器(という相反する要素?)が対旋律を奏でる様子が印象的です。

 

中間部は冒頭の再現のようなA.SaxのソロやOb.のソロが現れます。

そして木管楽器によるゆったりとしたメロディと、金管楽器の速いソロが繰り返された後、突然暴力的な音楽が始まります。

金管楽器のソロによってわずかに描かれていた主題を拡大していくような形で進んでいきます。

その主題を用いて徐々にクライマックスへと向かい、その頂点で突然曲は終わります。

 

本業指揮者らしいというか、非常にスコアリーディングが難しく、面白い曲に思えます。

とりあえずスコアが見たいですね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曲情報

曲名:シュレーディンガーの猫
作曲者:西村友
作曲年:2014年

この曲を一言で言うと:量子力学はむずい
演奏歴:なし

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Tuba. T