【No.99】ガラシャ Gracia for Symphonic Band

曲概要

「ガラシャ Gracia for Symphonic Band」は河邊一彦の吹奏楽曲です。

早稲田吹奏楽団の委嘱で作曲されました。

 

この曲の推しポイント!

この曲は私たちフィエスタウィンドシンフォニーの母団体である早稲田吹奏楽団の40周年を記念して作曲されました。

委嘱を依頼する際にいくつか曲の構成についてもお願いをしました。

 

・学生団体でもあり、多くの団員が所属していることから、できるだけ大編成にして欲しいこと。

・前年に演奏した「よみがえる大地への前奏曲」からの着想を経て、できればバンダを入れて欲しいこと。

・多くの楽器のソロがあること。

・最後は華やかに終わること。

 

河邊先生は全ての要求に答えてくださいました。

 

タイトルの通り、明智光秀の娘である「細川ガラシャ」と、彼女が生きた時代を描いた作品です。

父の謀反もあり、悲劇的な運命を辿った彼女は38歳で障害を閉じます。

 

冒頭の打楽器から始まるテーマは当時の不穏な情勢を表しています。

ついで、Cl.をはじめとする木管楽器群によってガラシャのテーマが奏でられます。

 

そして、「幻想交響曲」で使われていることでも有名なグレゴリオ聖歌「最後の日 Dies Irae」がバンダと舞台上の金管楽器によって演奏されます。

Trp.TbまでならまだしもHrn.までバンダがあります。

非常に派手な場面ではあるのですが、このモチーフが使われることでガラシャという人物に纏わりつく「死」のイメージを示唆します。

 

その後明智光秀のテーマがホルンによって演奏され、さらにTp.へと引き継がれます。

そして打楽器のSoliを経て、本能寺の変の悲劇的な場面に到達します。

 

本能寺の変〜山崎の戦いまでで300人近い死者を出しました。

その結果を示すように再び「最後の日」が演奏されます。

 

中間部はアルトフルートから始まるソロ回しを中心に描かれます。

まさかのアルトフルート指定は楽譜が完成した当時は衝撃的でした。

A.Fl→Cl.→(Hr.Euph)→Hrn→A.Saxと続いたソロはTrb.ソロへと繋がります。

 

その後場面を変えてTubaのソロ。悪そうですね。

関ヶ原の戦いにおいて敵対していた石田三成の進軍を現す場面に。

ここのバンダは「遠くから聞こえてくる進軍の音」を表すのに非常に効果的です。

 

そして突然、自らの死期を悟ったガラシャの心情を表す祈りの場面。

散りぬべき 時知りてこそ 世の中の 花も花なれ 人も人なれ

という辞世の句を残し、彼女は自ら命を絶ちます。

そしてTuttiによるロングトーンと打楽器の連打によって曲は幕を閉じます。

 

今年は大河ドラマも明智光秀ですし、やり時ですね。

また、それに伴い明智光秀が本能寺の変を起こした理由について投票が行われていました。

1位は信長の非道を許せなかった事による「暴君討伐説」

これを踏まえるとまた違って聴こえますね。

 

また、早稲田大学の近くには我羅奢 (ガラシャ)というラーメン屋さんがあり、初演当時はコラボラーメンを販売してくれました。

美味しいラーメン屋さんなので、演奏の機会があったらぜひ行ってみてください。

 

曲情報

曲名:ガラシャ Gracia for Symphonic Band
作曲者:河邊一彦
作曲年:2017年

この曲を一言で言うと:圧倒的感謝
演奏歴:早(第78回定期演奏会)

(早稲田吹奏楽団での演奏歴:早、フィエスタ・ウィンドシンフォニーでの演奏歴:F)

 

Tuba.T